不動産取引のクーリングオフの条件とは?適用範囲と注意点を徹底解説

不動産取引のクーリングオフの条件とは?適用範囲と注意点を徹底解説

更新日:2024.03.29

不動産の購入は非常に金額が大きな買い物となるため、買主は慎重に判断する必要があります。
なかには売買契約を締結したものの、その後契約を撤回したいと考えることもあるでしょう。
その場合は通常の買い物同様、クーリングオフを活用して契約を解除することができます。
ただし、クーリングオフは制度の内容が難しいため制度を活用するためには、適用される条件や手続きについて正しく理解することが不可欠です。
この記事では、クーリングオフが適用される条件やよくある間違いなどを具体的に取り上げ、正しい情報を解説していきます。
不動産取引でトラブルを未然に防ぎ、万が一の場合に備えるためにも、クーリングオフについての知識を深めておきましょう。

不動産取引におけるクーリングオフが適用される条件

不動産取引におけるクーリングオフとは、契約締結後に買主が契約を解除できる制度のことを指します。
しかし、全ての不動産取引にクーリングオフが適用されるわけではありません。
ここではクーリングオフが適用される条件について解説します。

売主が宅地建物取引業者

クーリングオフが適用されるための条件の一つは、売主が宅地建物取引業者であることです。
この制度自体が、不動産の知識が豊富な業者が知識の少ない買主に不利な契約を結ばせることを防ぐ目的で設けられたため、売主は宅地建物取引業者であることが条件となっています。
売主が宅建業者以外の場合は、クーリングオフの適用対象外となりますので注意が必要です。
不動産購入を検討する際は、売主が宅地建物取引業者かしっかりと確認しておきましょう。

買主が宅地建物取引業者ではない

クーリングオフは、一般消費者を保護するための制度です。
そのため、買主が個人や法人などでなければ適用されません。
買主が宅地建物取引業者の場合は、不動産取引に関する十分な知識を持っているとみなされるため、クーリングオフの適用対象外となります。

契約場所が事務所以外

クーリングオフが適用されるためには、事務所以外の場所で契約している必要があります。
また、宅地建物取引士がいて継続的に業務を行う案内所やモデルルームやモデルハウスも事務所とみなされるので注意が必要です。
そのため、自宅や勤務先といった場所での契約であればクーリングオフが適用される場合があります。
以下の表は、クーリングオフが適用できる場所と適用できない場所の例になりますので参考にしてみてください。

クーリングオフが適用できない場所 ・事務所
・案内所
・営業所
・住宅展示場
・モデルハウスやモデルルーム
・買主が指定した場所
クーリングオフが適用できる場所 ・事務所以外の買主が指定していない場所

クーリングオフが適用できる場合とできない場合の違いは、冷静な判断ができる場所かどうかになります。
買主都合や売主都合によって適用される場所が異なることもありますので、契約場所については慎重に決めるようにしましょう。

決済前で物件の引き渡しを受けていない

クーリングオフの適用条件の一つに、代金全額の支払いが済んでおらず、物件の引き渡しも受けていないことが挙げられます。
代金の支払いが済んでいる場合は取引が完了したとみなされ、クーリングオフは適用されません。
ただし、不動産売買の場合はクーリングオフ適用期間内に物件の引き渡しまで行われることは基本的には無いと言ってよいでしょう。
そのため、クーリングオフを適用できるかは決済前かどうかが重要になります。

クーリングオフの期間内である

クーリングオフは、説明を受けた日から8日以内に手続きをしなければなりません。
よくお問い合わせをいただくのは、不動産会社側へ届くのが8日以内なのかという話です。
クーリングオフは書面での手続きになり、8日以内に発送をしておけば良いため、相手方に書類が届くのが8日を過ぎていても問題ありません。
ただし、8日以内という期間は告知された日を1日目としてカウントするため、例として10月1日に説明を受けた場合は10月8日までに手続きをする必要があります。

不動産取引でクーリングオフができるケース

不動産取引でクーリングオフができるケース

前述したとおり不動産取引では、一定の条件を満たした場合にクーリングオフを行うことができます。
しかし、クーリングオフが適用されるケースと適用されないケースがあり、手続きを間違えると無効になってしまうこともあるので注意が必要です。
ここでは、不動産取引においてクーリングオフが可能なケースについて、具体的な例を交えて詳しく説明していきます。

通知から8日を過ぎていたが説明義務が果たされていない

クーリングオフが適用される期間は8日以内ですが、説明義務が果たされていない場合は8日を過ぎていてもクーリングオフをすることが可能です。
宅建業者から交付された書面に、以下の事項が記載されているかチェックしてみましょう。

  • クーリングオフ制度が利用できる条件
  • 当事者の氏名と住所
  • 売主のである宅建業者の商号または名称及び住所並びに免許証番号
  • 損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと
  • 手付金やその他の金銭を受け取っている場合は全額返還すること
  • 売買契約の解除は、解除を行う旨を記載した書面を発した時にその効力を生ずること

これらの事項が記載されていない場合は、クーリングオフの説明義務が果たされていないと見なされ、8日を過ぎていた場合でもクーリングオフが適用されます。
ただし、既に住宅の引き渡しが行われている場合はクーリングオフができないので注意をしましょう。

自宅に不動産会社の営業が訪問販売で来ていた

前述しましたが、買主の希望で自宅で申込みを行った場合はクーリングオフが適用されません。
ただし、売主が買主からの申し出がない状態で自宅を訪問して申込みをした場合は別です。
たとえ買主から訪問することについて了解を得ていたとしても、このケースだとクーリングオフを適用することができます。

不動産取引でクーリングオフができないケース

不動産取引でクーリングオフができないケース

クーリングオフは消費者を守るために設けられた制度ですが、クーリングオフが適用されないケースというのも存在します。
一見するとクーリングオフが適用されそうな条件であっても、実は適用されなかったというケースも少なくありません。
ここでは、不動産取引においてクーリングオフが適用されないケースについて詳しく解説していきます。

オークションや即時引き渡しの不動産取引

不動産のオークションや即時引き渡しの不動産取引は注意が必要です。
オークションだと、落札をした後に契約がすぐに成立してクーリングオフの期間が設けられないことがあります。
また、不動産を即時引渡しを行う取引では、契約が締結されたと同時に引渡しが行われることがあるのでこちらもクーリングオフ適用外です。
不動産の引渡しのタイミングと期間によっては、クーリングオフが適用されないケースがあるので注意をしましょう。

仲介業者が個人や法人を仲介していた

クーリングオフが適用されるのは、売主が宅建業者の場合のみです。
ここでの売主とは仲介業者ではなく、直接取引をする相手のことを指します。
そのため仲介業者が宅建業者であっても、仲介先の売主が個人や宅建取引業をしていない法人である場合はクーリングオフの適用外となるので注意をしましょう。
以下にクーリングオフの可否をまとめた表を用意したので確認してみてください。

売主 買主 クーリングオフの適用
宅建業者 個人や法人
宅建業者 宅建業者
個人や法人 個人や法人
個人や法人(仲介業者がいる場合) 個人や法人
個人や法人 宅建業者

クーリングオフが適用されるのは、売主が宅建業者であり買主が宅建業者以外の個人や法人である場合に限ります。
それ以外は適用されないので物件選びの際は売主の素性を確認するようにしましょう。

不動産の賃貸借契約

宅地建物取引業法第37条の2により、クーリングオフの対象となる取引は不動産の「売買」のみです。
不動産の賃貸借契約はこの売買にあたらないため、クーリングオフの適用対象外となるので注意しましょう。
賃貸借契約にはクーリングオフは適用されませんが、不動産売買にはない「重要事項説明」という制度が設けられています。
これは、専門的な知識を有する宅地建物取引士がお客様に説明することを義務付けているもので、クーリングオフの目的と同じ「消費者の保護」を目的として設けられた制度です。
また、賃貸借契約はクーリングオフができませんが、契約が成立する前に申込みをキャンセルすることができます。
契約が締結された後にキャンセルをしてしまうと契約解除となってしまい、費用が発生する可能性があるのでその点だけは注意しましょう。

オンライン契約を自宅で行った

令和4年5月18日に改正宅地建物取引業法が施行され、重要事項説明書と契約書の電子交付が可能となるなど、オンライン契約が可能となりました。
オンライン契約となると、買主は自宅や勤務先、喫茶店やホテルのロビー、ネットカフェなどどこにいても契約することが可能です。
そのため、国土交通省は不動産会社向けに「クーリングオフの対象外とするためには、契約書あるいは申込書等に顧客が自宅等を契約締結等の場所として特に希望した旨を記載することが望ましい」というガイドラインを発行しました。
これは従来の対面契約でもあった「買主が望んで自宅や勤務先を契約締結の場所として指定した場合は、クーリングオフの適用外となる」という旨を話しています。
ただし、場所の指定の有無がオンラインでは証明が難しいため、契約書や申込書にその旨を記載しておきましょうというのがガイドラインの内容です。
このことから、買主自らが自宅などの場所の指定をして契約を行った場合は、買主が契約締結の場所を自宅などに強く希望したと見なし、従来の契約同様クーリングオフの対象外になると考えられます。

クーリングオフができない場合の対処方法

クーリングオフができない場合の対処方法

不動産取引においてクーリングオフが適用されない場合でも、契約を解除する方法がいくつかあります。
ただし、適用される条件が厳しい場合や、手続きを間違えてしまうとかえって不利になってしまうものもあるので注意が必要です。
ここでは、クーリングオフができない場合の対処方法について、それぞれの方法の概要や適用条件、注意点などを具体的に解説していきます。

手付を放棄する

不動産売買契約を締結した際に、売主に対して手付金を支払った場合、買主は手付を放棄することで契約を解除することができます。
ただし、以下の場合は手付解除が認められません。

  • 契約で手付解除の期間が定められている
  • 手付解除を認めない旨が契約で定められている
  • 売主が契約履行に着手している

ここでの契約履行とはは建設工事を開始しているといったことを指します。
手付金があるタイプの契約でクーリングオフが認められない場合は、この手付の放棄を検討してみてください。

義務違反があった場合は債務不履行となる

不動産売買契約において、売主には以下のような義務があります。

  • 売買対象である土地建物の引渡義務
  • 土地建物の所有権移転登記義務

売買契約の決済期日が到来しているにも関わらず、土地建物の引渡しや移転登記が行われない場合は、原則として「履行遅滞」の責任が発生します。
この場合、買主は契約の解除を行うことが可能です。
また、不動産やその附属物について、品質や種類に契約内容との不適合が見つかった場合は契約不適合責任として契約を解除することができます。
ただし、債務不履行や契約不適合の程度が社会通念に照らした時に軽微だと見なされると契約解除が認められないので注意が必要です。

消費者契約法に基づいて契約解除

消費者契約法に基づく契約解除は、消費者保護の観点から認められている権利です。
買主が個人であり、売主が事業者であるケースでは、売主に以下のような行為が認められると契約を取り消すことができます。

  • 重要事項の不実告知
  • 不確実な事項に関する断定的判断の提供
  • 不利益事実の不告知
  • 消費者の要求に反する不退去
  • 退去しようとする消費者の妨害
  • 過量契約
  • 消費者の不安を煽る告知
  • デート商法
  • 霊感商法
  • 契約締結前にサービスを提供する行為

不動産取引では主に「重要事項の不実告知」や「不利益事実の不告知」などが問題になりやすいです。
不動産営業のセールストークがこれらに該当すると思われる場合は、消費者契約法に基づいて契約解除を行ってみるのも良いでしょう。

錯誤や詐欺の場合は契約取り消しが可能だが注意が必要

不動産の契約時に重要な勘違いがあった場合には錯誤取消し、売主にだまされて契約を締結した場合には詐欺取消しが認められる可能性があります。
それぞれの要件を表にまとめると以下のようになります。

錯誤取り消し ・意思表示に対応する意思を欠いていたこと
・その錯誤が法律行為の目的及び社会通念に照らして重要なものであること
詐欺取り消し ・相手方が詐欺行為を行った
・相手の詐欺行為により、購入者が錯誤に陥った
・錯誤に基づき、購入者が商品やサービスを購入したこと

これら2つは漠然とした規定のため争われやすく、内容が軽微だった場合は認められないことが多いです。
また、冷静になれる場所で契約を締結していた場合も、錯誤や詐欺を理由に契約を取り消すことは難しくなってしまいます。
クーリングオフができない場合でも状況によっては契約を解除することができますが、契約内容や売主の行為を十分に確認し、適切な対処方法を検討することが重要です。

クーリングオフでよくある間違いや勘違い

クーリングオフでよくある間違いや勘違い

不動産取引でクーリングオフを行う際には、制度の内容を正しく理解することが重要です。
間違いや勘違いをしたままだとクーリングオフの適用条件を満たしているにも関わらず、クーリングオフができないからと勘違いをした結果、損をしてしまうかもしれません。
また一方で、適用条件を満たしていないのにクーリングオフを試みてしまい、トラブルに発展してしまうこともあります。
ここでは、クーリングオフに関してよくある間違いや勘違いを具体的に取り上げ、正しい情報を解説していきますので参考にしてください。

クーリングオフに違約金は必要ない

よくある勘違いの一つが、クーリングオフを行う際に違約金や損害賠償金が必要だと思っているケースです。
クーリングオフを行った場合、買主が違約金や損害賠償金を支払う必要がないことは法律で決められています。
売主が買主にクーリングオフの説明をした書面には違約金や損害賠償金に関しての記載がされているはずなので確認してみてください。
もしそれらの記載が抜けている場合は説明義務が果たされていないことになりますので、適用期間を越えていてもクーリングオフを行うことが可能です。
また、すでに支払った代金は全額返還されますので、契約書類や領収書などは必ず保管しておくことをおすすめします。

手付金や契約申込金は返ってくる

クーリングオフによる契約解除を行った場合、手付金や契約申込金は返還されます。
そもそもクーリングオフという制度は、買主に一定期間に限り、無条件で契約の解除等を認める制度なので、売主に損害が発生しても買主にそれらを請求することはできません。
また、クーリングオフの効力は書面を発行した時点で生じ、売買契約は遡及的に無効になります。
そのため、売主である宅建業者は、受領していた手付金や契約申込金等の金銭を速やかに買主に返還しなければなりません。
ただし、クーリングオフではなく通常の契約解除の場合は、支払った手付金は「解約手付金」になり、返金されないので注意が必要です。

連鎖販売業のクーリングオフの期間は適用されない

連鎖販売取引において、クーリングオフの期間は法定書面交付の日から20日間以内とされています。
しかし、この連鎖販売取引には土地や建物などの不動産は含まれないと考えられるので注意が必要です。
連鎖販売業の形態は物品や権利の販売に係るものと、役務の提供に係るものに分けられます。
この物品という項目に土地や建物等の不動産が含まれるとは考えにくいです。
また、性質上連鎖販売取引によって取引がされにくいため、不動産取引は連鎖販売業のクーリングオフの期間が適用されないと考えて良いでしょう。

クーリングオフをする場合は内容証明郵便で送ろう

クーリングオフをする場合は内容証明郵便で送ろう

クーリングオフを行う際は、書面で通知するようにしましょう。
普通郵便や口頭で契約解除を申し出ることも可能ですが、相手から「受け取っていない」と言われてしまう可能性があるため、通知をしたことを証明できる内容証明郵便がおすすめです。
内容証明郵便を利用する際は、以下のような決まった書式で書面を作成する必要があるので参考にして下さい。

縦書きの場合 1行20字以内・1枚26行以内
横書きの場合 1行20字以内・1枚26行以内
1行13字以内・1枚40行以内
1行26字以内・1枚20行以内
使用できる文字 ひらがな・カタカナ・漢字・数字のみ
英字は固有名詞のみ
括弧・句読点・そのほか一般に記号として使用されるもの

書面の内容には「クーリングオフ通知」などの趣旨が伝わる表題を付けたり、「宅建業法第三十七条の二に基づき」といった根拠を入れると相手方にも伝わりやすいです。

まとめ

今回は不動産取引におけるクーリングオフ制度について解説しました。
クーリングオフは消費者を守るために設けられた制度ですが、条件を正しく理解していなければ制度を利用することは難しいです。
そのため、適用される条件や、適用されない場合の対処方法などを理解しておく必要があります。
クーリングオフ制度について不安や不明点があれば専門家に相談して、適用できるかどうかを確認してみましょう。

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