住宅ローンのペアローンはやめた方が良い?メリット・デメリットを徹底解説

住宅ローンのペアローンはやめた方が良い?メリット・デメリットを徹底解説

更新日:2025.08.06

ペアローンは、共働き夫婦にとって借入額を増やせるなどのメリットがある一方で、「本当に自分たちに合っているのか」と不安に感じる方も少なくありません。

実際に、「ペアローンで後悔した」「離婚後の対応が大変だった」といった声も見受けられます。

この記事では、ペアローンのメリットとデメリットをわかりやすく解説し、後悔のない選択をするための判断材料をお届けします

ペアローンを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ペアローンの仕組みと特徴

ここでは、ペアローンの基本的な仕組みと特徴についてわかりやすく紹介します

夫婦それぞれがローン契約者となる

通常の住宅ローンでは、契約者は夫婦のどちらか一方のみですが、ペアローンでは夫と妻の両方が契約者となります。

それぞれが別々に金融機関と契約を結び、個別に審査を受けるため、双方に安定した収入が求められます

また、団体信用生命保険(団信)に夫婦それぞれ加入するのが一般的です。

お互いが連帯保証人として支え合う

ペアローンでは、夫婦がお互いのローンの連帯保証人となります。

連帯保証人は、主債務者が返済不能になった際に、その債務を肩代わりする義務があります。

そのため、どちらか一方が返済不能になった場合には、もう一方が相手の分も返済しなければなりません

ただし、返済が滞りなく続いている限り、連帯保証の義務が発生することはありません。

住宅の所有権は夫婦の共有名義になる

ペアローンでは、夫婦それぞれが住宅ローンを契約するため、住宅の所有権も共有名義として登記されます。

通常の住宅ローンのように単独名義ではなく、夫婦で共同所有する点が特徴です

登記の際には、実際の負担額や収入の割合などをもとに持分割合を決め、共有持分として登記します。

ペアローンと収入合算の違いとは

ペアローンと収入合算の違いとは

ペアローンと似た仕組みに「収入合算」があります。

ここでは、それぞれの特徴や契約方法、仕組みの違いについてわかりやすく解説します

収入合算とは

収入合算とは、夫婦や親子の収入を合計し、1人が契約者として住宅ローンを申し込む方式です。

ペアローンと同様に借入額を増やせますが、契約者は1人でローンも1本という点が大きな違いです。

収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があります。

連帯債務型

連帯債務型は、1本の住宅ローン契約に対して、契約者ともう一人の連帯債務者がともに返済義務を負う仕組みです

名義人でない方も主債務者と同等の責任を持ちます。

物件は共有名義となり、双方が住宅ローン控除を受けられる点も特徴です。

また、借入可能額は単独契約より増えますが、ペアローンよりは少ない傾向があります。

連帯保証型

連帯保証型は、ローン契約者以外の方が連帯保証人となり、名義人が返済できない場合に限り支払い義務が発生する仕組みです

物件の所有権は契約者単独名義で、連帯保証人は住宅ローン控除の対象外です。

また、借入可能額は通常よりは増えますが、連帯債務型よりは少なくなります。

ペアローンと収入合算の違いを比較

ペアローンと収入合算は、仕組みや契約者の構成、住宅ローン控除の適用可否など、さまざまな点で違いがあります

以下の表では、それぞれの違いを比較できるよう項目ごとに整理しました。

住宅ローンの選択で迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

【夫婦でペアローンを組んだ場合と、夫が主契約者で収入合算した場合の比較】

比較項目 夫・妻(ペアローン) 夫(収入合算・連帯債務型) 夫(収入合算・連帯保証型)
借入可能額 夫婦それぞれの収入に応じた金額 夫婦の収入を合計した金額に応じた金額 夫婦の収入を合計した金額に応じた金額
ローン申込者 夫婦両方(夫婦が互いに連帯保証人となる) 夫のみ(妻は連帯債務者) 夫のみ(妻は連帯保証人)
住宅ローン控除 夫妻どちらも利用可能 夫妻どちらも利用可能 夫のみ利用可能
団体信用生命保険 夫・妻それぞれ加入 夫のみ加入 夫のみ加入
物件の名義 夫・妻の共有名義 夫・妻の共有名義 夫の名義

ペアローンの主なメリット

ここでは、ペアローンを検討する際に知っておきたい主なメリットについて紹介します

借入可能額を増やせる

ペアローンでは、夫と妻が別々にローン契約を結び、それぞれの年収ごとに審査が行われます。

単独での申し込みに比べて多くの金額を借りやすいので、高額な物件の購入も視野に入り、選択の幅が広がります。

ただし、借入額が過大になると、返済が家計に重くのしかかる恐れがあるため、将来の収入変動やライフプランも見据えたうえで、無理のない資金計画を立てることが大切です。

2人とも住宅ローン控除を利用できる

ペアローンでは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約するため、双方が住宅ローン控除を受けられます。

この制度では、年末時点のローン残高の0.7%を、最長13年間にわたって所得税から差し引くことが可能です

住宅の性能や年収によって控除額や適用期間は異なるため、事前に試算しておくと安心です。

夫婦それぞれが控除を受けられることで、単独ローンに比べて節税効果が期待できるでしょう。

2人とも団体信用生命保険に加入できる

団体信用生命保険(団信)は、契約者が死亡または高度障害になった際に、住宅ローンの残高を肩代わりしてもらえる保険です。

ペアローンでは、夫婦それぞれがローン契約をしているため、2人とも団信に加入することができます。

そのため、どちらか一方に万が一のことがあった場合でも、加入している側のローン残高は保険によって完済されます

もう一方のローン返済は続きますが、負担を軽減できる点は大きな安心材料といえるでしょう。

それぞれで異なる返済条件を選べる

ペアローンでは、夫婦がそれぞれローン契約を結ぶため、借入額や返済期間、金利タイプなどを個別に設定できます。

たとえば、1人は固定金利、もう1人は変動金利を選ぶといった形で、金利変動リスクを分散することも可能です

年齢や収入状況に応じて返済期間を変えるなど、柔軟な組み方ができる点は、ペアローンならではのメリットといえるでしょう。

ペアローンの主なデメリット

ここでは、ペアローンを検討するうえで知っておきたい主なデメリットについて紹介します

どちらかが亡くなっても、もう一方のローンは残る

ペアローンでは、夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入しますが、保障の対象となるのは各自が契約したローンのみです。

そのため、たとえどちらか一方が亡くなった場合でも、もう一方のローン返済は継続する必要があります

ペアローンを検討する際は、自分一人の収入でも返済を継続できるかどうか、あらかじめ想定しておくことが大切です。

どちらかの収入減で返済が難しくなる

ペアローンは2人の収入をもとに返済計画を立てるため、どちらかの収入が減ると、もう一方に返済の負担が重くのしかかります

たとえば、産休や退職、転職によって収入が減った場合は、もう一方の返済負担が増えることになります。

また、収入がゼロになると住宅ローン控除も受けられなくなるため注意が必要です。

将来の収入やライフスタイルの変化を見据えたうえで、余裕を持った借入計画を立てましょう。

借り換えや一本化が難しい

ペアローンは夫婦それぞれの収入を前提に組まれているため、後から片方の名義にまとめようとしても、借り換えの審査を通過するのは容易ではありません。

特に、もともと単独では借入が難しかった金額を2人で組んでいる場合は、収入や信用情報に大きな変化がない限り、一本化は現実的ではないでしょう

また、仮に借り換えが可能になった場合でも、金融機関への手数料や登記費用など、追加のコストがかかる点にも注意が必要です。

契約時の諸費用が高くなる

ペアローンでは2本のローン契約が必要になるため、印紙税や登記費用などの諸費用が単独ローンより高くなることがあります。

ただし、保証料や融資手数料などは合計の借入額が同じであれば、単独ローンと費用が大きく変わらないこともあります。

ペアローンで後悔しやすいケースとその理由

ペアローンで後悔しやすいケースとその理由

ペアローンは便利な反面、状況の変化によって後悔につながるケースもあります。

ここでは特に注意したいリスクについて紹介します

離婚時にローンや名義で揉めやすい

ペアローンは、離婚時にトラブルになるケースが少なくありません。

契約時は離婚を想定していない夫婦が多いですが、日本では3組に1組が離婚するという現実があります。

離婚時には、住宅を売却するか、ローンを一本化して名義を片方に移すのが一般的ですが、双方の合意が必要なため、話が進まないこともあります。

また、売却してもローンが残るとさらに複雑になるため、将来のリスクとして離婚時の対応も視野に入れておくことが大切です。

贈与税がかかる可能性もある

ペアローンでは、どちらかの収入が途絶えた場合に、もう一方が相手の返済分も負担することがあります。

こうした支払いが「贈与」とみなされると、金額によっては贈与税の課税対象となる可能性があります

返済負担が増す中で、思わぬ税金まで発生することで後悔するケースもあるため、収入変化のリスクと税務面の影響は事前に把握しておくことが大切です。

ペアローンが向いている夫婦の特徴

ペアローンは、夫婦それぞれが安定した収入を持ち、返済に無理がない場合に適しています。

特に、共働きで年収が近い夫婦は、借入額を増やしやすく、ペアローンのメリットを最大限に活かせます

一方で、収入に差が大きい場合や、どちらかが将来的に働けなくなる可能性がある場合は、一方に返済の負担が偏りやすくなります。

そのようなケースでは、収入合算など他の方法を検討するのも選択肢の一つです。

離婚時のペアローンに関するよくある質問

離婚時のペアローンに関するよくある質問

離婚時にペアローンをどう扱えばいいのか、不安を感じる方も多いでしょう。

ここでは、離婚時のペアローンに関するよくある疑問にお答えします

離婚後もペアローンの返済は必要ですか?

はい、必要です。

離婚をしてもペアローンの契約は継続しており、それぞれが自分のローンを返済し続ける義務があります

たとえ別居していても契約はそのままで、返済義務が自動的に消えることはありません。

なお、ローンの一本化や名義変更を希望する場合は、別途手続きと審査が必要になります。

離婚後、共有名義の住宅はどう扱えばいいですか?

共有名義のままでは、勝手に売却できません。

離婚後も共有名義は維持されるため、住宅を売却したい場合には相手の同意が必要です

片方だけの判断で売却を進めることはできず、話し合いがまとまらないと手続きが滞る恐れもあります。

トラブルを避けるためには、離婚前に住宅の取り扱いについて十分に協議しておくことが重要です。

離婚時にペアローンを解消するにはどうすればいいですか?

ペアローンを解消するには、ローンの一本化か住宅の売却が必要です。

ローンを一本化するには、どちらか一方が再審査を受けてローン契約を引き継ぐ必要がありますが、1人の収入では審査が通らないケースも少なくありません。

実際には、住宅を売却してローンを完済する方法が多く取られています

住宅の売却額がローン残高を下回る場合(オーバーローン)には、任意売却を行い、不足分については金融機関と返済方法を調整する必要があります。

まとめ:ペアローンのデメリットを理解して、後悔のない選択を

ペアローンは借入可能額を増やせるなどのメリットがある一方で、離婚時や収入減少時のリスクなど、見逃せないデメリットも存在します。

ペアローンのデメリットをしっかり理解したうえで、自分たちにとって無理のない住宅ローンの形を選ぶことが、後悔のないマイホーム購入につながります。

将来のライフプランや家計の変化も見据えながら、最適なローンの組み方を検討しましょう