
頭金なし住宅ローンは無謀?注意点や後悔しないポイントを解説
頭金なしで住宅ローンを組んでも大丈夫なのか、不安に感じていませんか?
実際、「無謀かもしれない」「後悔しないだろうか」と迷う声も少なくありません。
本記事では、頭金なし住宅ローンのメリット・デメリットや注意点を整理しながら、後悔しないためのポイントをわかりやすく解説します。
ライフプランや家計の状況に応じた判断のヒントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
頭金なしの住宅ローンを検討する際の基本知識
頭金なしの住宅ローンを検討する前に、基本的な仕組みや現状を把握しておくことが大切です。
ここでは、頭金の意味や、実際に頭金なしで購入する人の割合をご紹介します。
頭金とは?
住宅を購入する際に、物件価格の一部を現金で支払う部分を「頭金」と呼びます。
たとえば、4,500万円の住宅を4,000万円の住宅ローンで購入する場合、差額の500万円が頭金にあたります。
この頭金は、自分で貯めた資金のほか、両親などの家族からの援助を受けて用意するケースもあります。
住宅ローンを組む際は、頭金の有無が借入条件や返済プランに影響を与えることもあるので、事前にしっかり確認しておきましょう。
頭金なしで住宅を買う人の割合は?
国土交通省の統計によると、住宅建築資金に占める頭金の割合は、平成26年調査では41.9%だったのに対し、令和6年には29.2%となっています。(*1)
つまり、以前は費用全体の4割を頭金でまかなうのが一般的だったものの、現在では3割を切る水準にまで減少しています。
また、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査によると、全体の27.6%が頭金なし、特に30代では37%が頭金なしで住宅を購入しています。(*2)
これらのことから、頭金なし、または頭金を抑えた購入スタイルが一般的になりつつあると言えるでしょう。
頭金なしで住宅ローンを組むメリットとは

ここでは、頭金なしの住宅ローンを組むことで得られる、主なメリットを解説します。
理想の物件をすぐに購入できる
頭金なしの場合は、希望の条件に合う物件を見つけた際に、資金不足を理由に見送らずに済むので、すぐに購入手続きを進められます。
人気の物件はすぐに買い手が現れてしまうため、理想の住まいをタイミングよく契約できることは大きなメリットと言えるでしょう。
手元に自己資金を残せる
頭金を支払わない場合、その分の自己資金を手元に残しておくことができるため、急な出費や生活の変化にも備えやすくなります。
たとえば、お子さまの進学や家族の入院など、まとまった支出があるときにも柔軟に対応できます。
また、住宅購入後の引越しや新生活に必要な家具や家電の購入に自己資金を充てられる点も、大きなメリットになるでしょう。
住宅ローン控除を最大限に活用しやすい
住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を最長13年間、所得税から差し引ける制度です。
たとえば、年末時点の残高が3,000万円であれば、3,000万×0.7%=21万円の控除が可能です。
頭金なしで借入額が増えれば控除額も大きくなりますが、返済負担が重くなる点や、控除額に上限があることには注意が必要です。
早期返済で老後の負担を軽減できる
頭金を貯める期間を省くことで、ローン返済のスタートを早められることも大きなメリットです。
たとえば、40歳から35年ローンを組めば完済は75歳ですが、28歳からであれば63歳で完済になります。
定年前に返済を終えられれば、年金生活の不安が軽減されます。
老後の負担を減らすためにも、早めの返済開始は大きな意味があると言えるでしょう。
頭金なしで住宅ローンを組むデメリットとは

頭金なしで住宅ローンを組む人は増えていますが、注意すべき点もあります。
ここでは、代表的なデメリットを解説します。
借入総額が増えれば月々の返済額も増える
頭金なしで住宅ローンを組むと借入額が増えるため、月々の返済負担も大きくなります。
たとえば500万円多く借りれば、その分利息も増え、支払い総額が膨らみます。
特に変動金利を選ぶ場合は、金利上昇のリスクも見据えた計画が必要です。
将来的に返済額が増えても家計が圧迫されないよう、余裕を持った返済プランを立てましょう。
金利が上がるケースもある
頭金なしや頭金が少ない場合では、住宅ローンの金利が高めに設定されることがあります。
たとえばフラット35では、融資額が物件価格の9割を超えると金利が上がる傾向があります。
融資率 | 金利の範囲 | 最も多い金利 |
---|---|---|
9割以下 | 年1.940%~年3.690% | 年1.940% |
9割超 | 年2.050%~年3.800% | 年2.050% |
頭金を少なくすると、結果的に総返済額が増える可能性があるため、こうした金利の違いにも十分注意しましょう。
住宅ローンの審査が通りにくくなる
頭金なしだと融資率が100%になるため、住宅ローンの審査が厳しくなる傾向があります。
年収や勤続年数、他の借入状況などが細かく確認され、場合によっては審査期間が長引くこともあります。
十分な返済能力を示せないと、希望通りの借入ができない可能性もあるでしょう。
担保割れの可能性がある
担保割れとは、住宅ローンの残高が売却時の住宅価格を上回ってしまう状態のことです。
たとえば4,000万円のローンが残っているのに、売却しても3,500万円にしかならない場合などが該当します。
この状態になると、住宅を売却してもローンを完済できず、追加で自己資金を用意しなければならない可能性があります。
【年齢別】頭金なしで住宅ローンを組む際のポイント
頭金なしで住宅ローンを組んで後悔しないためには、年齢に応じた注意点を理解しておくことが大切です。
ここでは、35歳・45歳の場合に分けてそれぞれのポイントを解説します。
【35歳】頭金なしで住宅ローンを組む場合
35歳は、家族構成や働き方の変化が起こりやすく、将来を見据えた住宅ローン計画が重要です。
結婚や出産、転職、共働きの可能性なども踏まえてシミュレーションしましょう。
また、これまで十分な自己資金を用意できなかった場合は、その理由も見つめ直すことが大切です。
頭金なしで住宅ローンを組む場合は、65歳までに無理なく返済を終えられるプランが理想です。
【45歳】頭金なしで住宅ローンを組む場合
45歳で頭金なしの住宅ローンを組むことは可能ですが、年齢的に健康リスクも考慮されるため、審査が厳しくなる傾向があります。
また、返済期間が短くなりやすく、月々の支払額が多くなり、負担も大きくなりがちです。
お子さまの教育費や老後資金の準備も重なる時期のため、無理に65歳完済を目指すのではなく、繰り上げ返済も視野に入れた柔軟なプランを立てましょう。
無謀になりやすい頭金なし住宅ローンを組む人の特徴

頭金なしで住宅ローンを組む場合、計画次第では無謀と見なされてしまうことがあります。
ここでは、後悔しやすい人の傾向や、注意すべきポイントを解説します。
十分な貯金がないのに購入する
貯金が少ない状態で住宅を購入すると、思わぬ出費に備えづらくなります。
たとえば、家電の故障や家族の入院などが重なると、残っている資金だけでは対応しきれないことがあります。
住宅ローンを組む際には、緊急時に使える生活費をある程度確保しておくことが大切です。
共働きが前提で返済計画を立てる
共働きを前提に返済計画を立てると、一方が何らかの理由で働けなくなった場合、返済が難しくなる可能性があります。
将来、どちらかが育児や介護などで予定通りに働けなくなることがあるかもしれません。
そうした可能性もあらかじめ想定しておくことが大切です。
万一に備え、片方の収入でも返済が続けられるような計画を立てましょう。
節約済みの家計で見直せる支出が少ない
もともと節約していて支出を抑えている家庭では、これ以上の固定費の削減が難しく、見直せる費用が限られます。
その状態で住宅ローンを組むと、返済が家計に重くのしかかり、生活を圧迫しやすくなります。
無理のない返済額を設定し、少しでも余裕を持てる資金計画を立てることが大切です。
後悔しない頭金なし住宅ローンのポイント

頭金なしでも後悔しないためには、将来を見据えた準備が欠かせません。
ここでは、安心して住宅ローンを返済していくためのポイントを紹介します。
将来を見据えた無理のない返済計画を立てる
頭金なしで住宅ローンを組む場合は、将来を見据えた無理のない返済計画を立てることが重要です。
お子さまの進学が重なる時期には、塾代や受験料、学費などの出費が集中し、家計を圧迫する可能性があります。
こうした教育費はもちろん、自分たちの老後の生活資金や、転職、収入減といった将来的な変化も想定しておく必要があります。
収入が一時的に減少しても対応できるよう、月々の返済額は「現在の収入の8割でも返済可能な金額」を目安にしましょう。
また、変動金利を選ぶ場合は、金利が上昇したときの返済額も事前に試算しておくと安心です。
住宅購入にかかる総費用を把握しておく
住宅を購入する際には、ローンの借入額だけでなく、現金で支払う必要のある費用にも注意が必要です。
なかでも気をつけたいのが「手付金」です。
これは売買契約時に支払うもので、目安は物件価格の5〜10%程度と高額です。
原則として契約当日に現金で支払う必要があるため、貯金がない場合は大きなハードルとなります。
そのほかにも、不動産取得税や登記費用、仲介手数料といった諸費用(物件価格の5〜10%)、引越し代、家具・家電の購入費、修繕費用なども想定しておく必要があります。
こうした費用も含めた総額を把握し、住宅ローンの返済計画とあわせて検討しておくことが、無理のない資金計画につながるでしょう。
繰り上げ返済を活用して返済総額を抑える
繰り上げ返済とは、住宅ローンの返済期間中にまとまった資金を使って、借入金の一部を予定より早く返済する方法です。
借入額が減ることで利息も少なくなり、結果的に総返済額を減らせるメリットがあります。
繰り上げ返済には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。
どちらを選ぶかは家計状況や将来の計画に応じて判断しましょう。
特に借入から早い時期に繰り上げ返済を行えば、利息を大きく減らせるので、総返済額の負担も軽くなります。
頭金なし住宅ローンで後悔しないためのチェックリスト
これまで、頭金なし住宅ローンのメリットやデメリット、注意点について詳しく解説してきましたが、最終的に後悔しないためには「自分の状況に合っているかどうか」を見極めることが大切です。
頭金なしでも後悔しにくい傾向があるのは、次のような条件を満たしている人です。
ご自身の状況と照らし合わせて、無理のないローン計画を立てられているか、チェックしてみましょう。
- 月々の返済額が手取り月収の25%以内に収まっている
- 緊急時に備え、半年分以上の生活費を貯蓄として確保している
- 固定費の見直しや副収入の確保など、将来的に家計を改善できる余地がある
- 共働きや実家の援助など、複数の収入源に支えられている
- 教育資金・老後資金・転職リスクなども含めて、ざっくりとした将来設計を立てている
長期の住宅ローン返済を安定して続けるには、返済比率にゆとりを持つことが大切です。
目安として、毎月の返済額は手取り収入の20〜25%に収めるのが理想とされています。
家族の状況やライフプラン全体を見据えたうえで、無理のない資金計画を立てることが、後悔を避けるポイントです。
まとめ:頭金なし住宅ローンを後悔しないで組むために
頭金なしで住宅ローンを組む場合でも、しっかりとした計画と準備があれば、無理のない形でマイホームを手に入れることが可能です。
メリットとデメリットを理解し、自分に合った返済プランを立てることで、将来の不安を減らし、ゆとりある暮らしにつなげることができるでしょう。
住宅購入は人生の中でもとても大切な選択だからこそ、しっかりと準備することが、明るい未来への第一歩となるのです。